「杏ちゃんっ!!」
放課後。
保健室利用者を把握するため、名簿に記帳した人たちが呼ばれた。
あたしも、保健医と少し症状の話などをして、少しでも具合が悪くなったら連絡することを約束してきたところ。
保健室を出て、教室へ戻って荷物を取ろうと思い歩き出したとき、背後から声をかけられた。
「柏木くん。」
肩を上下させて苦しそうな柏木くんが立っていた。
「部活抜けて来てん。そろそろ出てくるころやと思って。」
ニカッと悪戯に笑いながらこちらへ進む。
「大丈夫なん?具合悪なりよったりしてへん?」
そっとボールの当たったおでこに触れながら、なんだか苦しげな顔で聞く。
「うん・・、もう大丈夫。なんともないよ。」
伏し目がちで、控えめに答える。
いつもなら、良かったとか言ってニコニコ笑ってくれるのに、今日の柏木くんはあたしのおでこから手を離そうとしない。
「・・・柏木くん?本当に、もう大丈夫だから・・。」
さっきより声を張って伝えてみても、一向に動く気配がない。