さっきまで柏木くんのことを思い出してたのに、今は春市先生でいっぱい。
つんとした香り、強めに抑えられた頭の感触・・・。
なにより、首筋に残った“アト”が、頭をくらくらさせる。
起き上がることも忘れて、ただボーっとベッドから天井を仰ぐ。
「俺のもの、か・・・。」
その言葉を、どう解釈していいのか悩んでる。
どうせ先生は、こき使うのに丁度いいコマくらいに思ってるんだろうけど・・。
「・・期待させんな・・。」
自分の中に芽生える期待を踏み潰すように、わざと口に出して言う。
ガバッと頭まで布団をかぶって、大きく深呼吸をすれば、少し落ち着いた。
「・・・戻ろ。」
ベッドから這い出て、靴をきちんと履いて、気合を入れると保健室を出た。
途中、階段付近で相変わらずいろんな靴の色の女生徒に囲まれてる先生を見かけて足が止まりかけたけど、無視した。
殺人スマイルが偽物と分かってから、あの顔を見るのがなんとなくいやになってた。
・・・あたしには、苦い顔ばっかりしてるくせにって思ってしまうから。
体育館に戻ってみると、あたしの代わりに出てくれた子が大活躍で、優勝とまでは行かなかったけど、3位に入賞することができた。
総合でも2位と好成績で、クラス中大興奮の中、体育大会は終わった。