正直、柏木くんに気持ちがないって言ったらうそになる。
事ある毎に柏木くんはあたしのところへ来て、たくさん楽しませてくれるから、いろいろな思い出の中に彼の姿があることも少なくない。
だけど、今は・・・。
ガラッ
頭の中でぐるぐると考えていると、保健室のドアが開く音がして、薄く目を開ける。
保健の先生は、外でテントを張って待機しているので、保健室にはあたししかいない。
校内でけがをした場合は、よっぽどひどくない限り、近くの先生や保健委員などに手当してもらうシステムだ。
大方、突き指でもした生徒が入ってきたんだろうと気にも留めず、また目を閉じる。
その人は、しばらく入り口付近に立っていたみたいで、少しすると足音が聞こえて、目的をもって歩き出したことが分かる。
その足音は、だんだん近づいてくる。
あぁ、大会めんどくさくなってサボりに来たのかな。
なんてぼんやり考えていたら、シャッとカーテンが滑る音がした。
あれ・・・・。
今の音、あたしのいるベッドからしてる・・・?
そう気づいたと同時に、急に体が揺れた。
「っ・・・・・!!」
目を開いて、その揺れが人によってもたらされたものだと理解した。
「・・目ぇ覚めたかあんこ。」
そこにいたのは、春市先生だった。