「・・じゃあオレ、みんなの応援行くわ。」


「あ、うん・・。ありがとうね。」


柏木くんは、しばらく様子を見ていてくれたけど、そう言ってあたしの頭を軽くなでて、保健室を出て行った。


まだ少し彼の温もりが残る左手を、自分自身で握りしめる。


“あ、あの・・・・・、好きや!!”


もう、3か月も前なんだ。


急にクラスの男子に、隣のクラスの柏木が呼んでるって言われて、体育館裏に行った。


あたしの知っていた柏木雅史くんとは少し違った印象を受けたっけ。


顔を真っ赤にして、どこかそわそわした様子で。


“返事は、今すぐやなくてええ。・・ゆっくり考えてな。”


少しだけ困った顔をしてしまったあたしに、優しくそう言ってくれた。


さっきみたいに頭をポンポンと叩いて、微笑んだ柏木くんがかっこよく見えたのを覚えてる。


その日から、彼は毎日あたしのクラスへ通うようになった。


“杏ちゃんおはよー!!”


“・・ほんま、かわええわ。”


“今度の試合、見に来てや!!カッコいいとこ、見せたる。”


目を閉じれば、この3か月見続けてきた柏木くんのいろんな顔が浮かんだ。


・・・あたしは、彼にどう言ってあげたらいいんだろう。