少し懐かしそうに話す彼は、もう一度
花火が上がる夜空を見上げる。

花火の明かりに照らされる彼の表情は
さっきまでと違って晴れやかにみえた。



「辛いことがあるから、乗り越えたときの幸せがある。当たり前の幸せを感じることができる。
花火だってきれいに散るからこそ 俺たちを感動させるだろ?
…生きている間には気づけなかったけど、今ではほんとにそう思うんだよ」


「え……」


生きている間、って…どういう…



「…リツ」


手をゆっくり伸ばして、私の頬を優しく包み込む。