裕太は2人の肩から顔を離すと、真昼を見た。
「で、さっき言った通り、俺らバンドやってるんだ。でも、ボーカルがいない。だから──」
「ボーカルをやってほしいわけでしょ?」
真昼は口の端を持ち上げてそう言った。
そのまま、言葉を続ける。
「確かにアメリカでバンドはたくさん見てきたし、ギターだって弾ける。歌にも自信がある。でもさあ…」
真昼はそこで1回、言葉を区切った。
「でもね、うちにもバンドを選ぶ権利くらいあるんだよ。だからさ、そっちの演奏見せてよ。代わりに、うちの腕前も見ればいい。」
一気に条件を提示した真昼は、どうやら頭がキレるらしい。
恵がニヤリと笑うのが見えた。