「絶対に見ないで下さい」
そう言って
老人は俺に箱を与えた。

バスケットボールが入るぐらいの箱。
俺は受け取り
老人は去る。

暗い夜道
アパートで女を殺し
走って家に帰る途中だった。

指紋は残してないし
痕跡もない。
首を一気に絞めてから
ナイフを使って動脈を切り

そのまま
風呂に沈めてきた。

返り血は付いてない。

大丈夫なはず。

そんな帰り道
老人がすれ違いざま俺に話しかけ、箱を渡す。

見ないでくれって……そんなの渡すか?

殺人までやらかした
俺に怖いものはない。

薄暗い街灯の下
箱を開けると




「おつかれー」と…

さっき殺した女が
口から血をダラダラ流しながら

俺を見上げてそう言った。

首だけの姿で。



    【完】