「もう、浮気はしない」

彼がアパートの一室で言う。

「俺にはお前だけだから」

嘘。

「二度と泣かせない」

これも嘘。

「お前、俺の携帯見たろ」

これは本当。

「見てないよ」

これは私の嘘。

もう、嘘はたくさん。

嘘は嫌。

彼は私を抱き寄せ
私に唇を重ねてキスをする。

最初は静かに
そしてむさぼりあうようなキスとなり
舌を割り入れ重ねた時。

私の歯はギロチンとなり
ふたつの柔らかい固体が口で踊る。

鉄のような苦い液体が、口に広がりあふれ出す。

驚愕の彼の表情と
流れ落ちる赤い液体を感じながら

私は笑って気を失う。


もう

2人とも嘘は言えない。


   【完】