今度は掴まれた腕を振り払わずに、初めてかおるさんに目を向けた。
眉間にしわ寄せて、まっすぐあたしを見つめる瞳。
その瞳が
『別れたくない』
なんて、言ってるように見えるのは
…きっと、あたしの錯覚…。
一度、目をつぶって
ゆっくり、ゆっくり微笑んだ。
「…ここで終わりだよ、あたし達。
あたしのこと…忘れて。」
かおるさんに、ふらせるなんてさせたくなかった。
そんなのは多分きれい事で
かおるさんに飽きられた自分を認めたくなかっただけで。
忘れて、なんて
今のあたしの気持ちから一番かけ離れてる…
忘れないでよ。
かおるさんの中からあたしがいなくなるなんて
何よりも耐えられない。
だんだん力が抜けていって
今にも落ちそうな手を
あたしは
振り払って背を向けた。