店内にはお客さんも切れててあたし達だけ。
逃げたい。
逃げたい…。
かおるさんがこの言葉を完全に理解して、受け取ってしまう前に。
訂正したくなる自分をぐっと抑えて視線をさまよわせる。
…見れないよ。
かおるさんの顔なんて。
怖くて、怖くて
今にもしゃがみこんでしまいそうだった。
「…は?何、言うとんねん…。それ…俺と別れたい、っちゅーことか…?」
…嫌だよ。
好きな人なんていない。
なのに
皮肉にも、こんなときにもあたしの饒舌さは増す。
「うん、そーゆーことかな。隣のクラスのね、片瀬くんって人が好きなの。スッゴい綺麗な顔してるんだぁ…。」
「…紫衣。」
「片瀬くん、あたしのこと好きって噂あるし、イケるかもなの…。」
「紫衣っ!!」
「…バイバイかおるさん。ごめんね、急に。今までありがと…。」
「やから紫衣!意味わからんて…っ!」
さよなら
かおるさん。
大好きだから
幸せになってね。