ざわざわざわざわ……

フードコートのざわめきが、遠退いていく。



カップルがお茶している。
家族連れがラーメンを食べてる。
子供たちが、走り回っている。


うん。
普通の光景だ。

ごく、普通の。


……あたし。
うん、スニーカーだ。
ピンクのスニーカー。

派手じゃなくて、可愛い。


ジーンズ。
気に入ってる。

よく、履くから。
裾が少し、ほつれてる。

うん、普通だ。

あたしも、普通。


けど、今。

あたしを取り巻いている環境は、ちょっと普通じゃない。




「二谷さん、瑠樹亜のこと、好きなんでしょう?
それなら、瑠樹亜を助けてあげて」



助ける?
瑠樹亜を?
どうやって?

そう思っても、声にならない。



「私達を、助けて」



あたしの見間違いなのか。

美山さんの大きな瞳の奥が……
ゆらゆらと、揺れている。

その奥には。
強い強い決意の光。


真剣だ。
美山さんは、真剣だ。

真剣に。
あたしに何かを訴えてる。


だけど……