「あの女は、多分今ごろ。
他の男と、ヒーヒー言ってるよ」
吐き捨てるような、瑠樹亜のセリフ。
ひ、ひーひー……?
言っている意味がわからなくて、あたしの目は点になる。
「じゃ」
「あ、うん」
ひーひーの意味がわからないまま、あたしは教室を出ようとする瑠樹亜の背中を見送る。
ひーひーって……
何だろう。
ドラマでいつか見たことのあるシーンが、赤いベンツの女(ヒト)と重なる。
露になった白い肌。
そこに重なる筋肉質な男のヒトの背中。
怪しく上下する動き。
女のヒトから漏れる声。
あ、え、あ?
突然、めくるめくイケない妄想があたしの頭の中に現れきて、あたしは慌てて頭を振る。
いやいや、いや。
なに考えてんだろう、あたし。
いくら瑠樹亜のお母さんが若くて綺麗だったからって。
「う……また鼻血出そう」
あたしはハンカチで顔を押さえながら、結局、一人で学校を出る。