「あ、る、瑠樹亜くん、ありがとうね」


「何が?」


「あ、おかげで、ウチの班、早くしおりが出来上がりそうだし。

まだ、他の班は、資料まとめしてるんじゃないかな」


「いや、早く終わらせたかったし」


「……だよね」


この時間が楽しかったのは、やっぱりあたしだけだったのかな。

そうだよね。


うむ。

このまま、一緒に帰ろうとかいう流れにはならないのかな。

ならないよね。



方向、確か同じはずなんだけどな。
あ、でも、自転車じゃないとか?

またあの綺麗なお母さんが、迎えに来るのかな。


「瑠樹亜くん、自転車?」


「いや」


「あ、お母さん、迎えに来る?」


「え?」


突然、鋭い目であたしを見る瑠樹亜。


あ。
何かまずかったかな。


「いや、ごめん。

この間、お母さんが迎えに来たところ、たまたま、見ちゃったから。

屋上でチョコレートもらった日」


「……ああ」


「綺麗な人だよね、お母さん」


「……」


(余計なこと言っちゃったかな)