美山さんは髪をなびかせて。
土手の頂上を目指していく。
そこにいったい何があるのか。
本当にそれが正しいのか。
選ぶべき道なのか。
あたしには分からないけれど。
「戻ってきてえ……!!!」
あたしは、叫ぶくらいしかできないけど。
ダダンダダン……
……ダダンダダン……
「……章江!!!」
……ダダン
……一瞬、ほんの一瞬だ。
あたしは迫り来る黒い塊に気をとられて。
掴んだ手を……
ゆるめてしまったかもしれない。
「―――……!!!!」
あたしの腕から。
瑠樹亜の細い脚はすり抜けて……
手は。
虚しく空を掴んだ。
「瑠樹亜――――……!!!」
ダダダダダダンッ……
ダンダダン……
ダンッ
あたしの声をかき消して……
一陣の。
強い風が吹き抜けた。