「ありがとう……ひよ……」


美山さんが、笑う。


「バイバイ……ひよ……」


その、真っ白な頬を。

あたしと同じ涙が伝った。



……ダダンダダン……

ダダンダダン……



だけど。
無情にも。

黒い影が。

音を立てて近付いて来る。


ありがとうなんていらない。
バイバイなんて聞きたくない。



「離せ!!
離せってば! 二谷!!」


「ごめんね……瑠樹亜」


「おい!! 章江!」


仲良くなれるって思ってた。
少しずつ。

分かり合えるかもしれないって。


なのに。


「離せ! 二谷!!」



渾身の力を込めて。

瑠樹亜の足にしがみつく。



「美山さん!!!」


呼び掛けても。
もう返事はない。