「そんなこと、言わないで、ひよ。
貰って。
お願い」
そう言って帽子を差し出す美山さんの目は。
背中がゾッとするくらい真剣で。
「……え、あ、うん。じゃあ……」
危機迫ってるって、感じで……
「ありがとう。
きっと、ひよにも似合うから」
その笑顔も。
消えてしまいそうに悲しくて。
「……うん。
ありがと……」
あたしは差し出された帽子を受け止めるしかなかった。
手に取ってみると。
帽子は思ったより軽くて。
淡いピンクは。
すぐに汚れてしまいそうだし。
お花のモチーフは。
力を入れたらポキッと取れてしまいそう。
大きなつばは、ハタハタと風に揺れていて。
大きな風が吹いたら。
ヒュウっと飛ばされて連れていかれてしまいそうで。
あたしは美山さんからもらった帽子を。
胸にしっかりと。
抱きしめた。
「ありがと……大事にする」
元気でね。
瑠樹亜をよろしくね。
そう言う代わりに。
小さく微笑んだ。