やっぱり、風が冷たかった。
川の水で冷やされた風が。
ヒュウと容赦なく肌に吹き付ける。
美山さんはジャージの上にカーディガンを羽織っていた。
あたしは、チェックのシャツ。
シャツでは、少し寒いくらい。
「寒くない?」
「うん、ちょっと」
近くで座って見ると、美山さんの肌はますます白い。
血管が、浮き出て見えるみたい。
「……班に戻ったら。
また色々言われちゃうだろうなあ」
美山さんは自嘲ぎみにふふふっと笑うけど。
あたしは何だか嫌な気持ち。
なんで美山さんがそんな目に遭うのか。
あたしには全然分からないんだ。
だけどもちろん。
それを美山さんに問うのは。
違うってことも、分かってる。
「あああ……
瑠樹亜とひよと、同じクラスだったらよかったのになあ。
そうしたらこの最後の旅行も、もう少し楽しくなるのに」
そう言って空を見上げる美山さん。
『最後の旅行』
その言葉も。
ちくん、とあたしの胸に刺さった。
秋の風に、美山さんの帽子のつばが揺れる。
ゆらゆら。
ゆらゆら。
遠くでは、向井と山本の元気が笑い声が響いている。