「体調悪いのに、無理して田んぼに出たの?」
あたしの質問に。
美山さんがこくん、と頷く。
「そんなの、ちゃんと班長に言って休ませてもらえばいいのに」
フルフル、と。
今度は首を小さく横に振った。
「何で……」
「そんなの。
私みたいな存在には、許されないんだよ」
その声には。
微かな怒りが含まれている。
「ちょっと座ろう、ひよ」
美山さんに促されて、あたし達も木陰に座る。
瑠樹亜とは。
少し離れた場所。
「ごめんね、ひよは、瑠樹亜の隣がいいよね。
でも、ちょっとだけ、私とおしゃべりしてくれるかな」
ごめんね、なんて。
そんな言い方。
何だかまた悲しくなる。
「うん、もちろんだよ」
その言葉に、嘘はなかった。
美山さんが心配だった。
いつものふんわりした雰囲気に隠れてるけど。
強い怒りが芯に宿っている感じがする。
感情を。
ぐっと抑えてるみたい。
「ありがとう、ひよ」
……どうして。
どうして、こんなに弱い女の子が。
こんなに辛い思いをしなければいけないんだろう。
美山さんの、はち切れそうな『ありがとう』に。
あたしの胸が。
ぎゅうと傷んだ。