「るき……」
「ひよ!」
瑠樹亜の名前を呼び掛けたところで、可愛らしい声に引き留められた。
この声は。
「……美山さん……」
間違いなく、美山さんだ。
歩いてくるの華奢なシルエット。
お花のモチーフの帽子は。
喫茶店で会った時にかぶっていたものだ。
「あれ? 美山さんの班も自由時間、河原?」
見回してみるけれど、他にF組の子はいないみたいだった。
もしかして、抜け出してきたのかな。
「ううん。
ひよ達の自由時間、ここだって聞いてたから」
にっこりと笑う彼女の顔は。
抜けるほど白い。
体調が悪いのかな。
顔色がよくないような気がする。
「……大丈夫?」
「え?」
「ん、美山さん、顔色、悪い気がする」
「……ふふ、ありがと」
「え?」
「実は、ちょっと、体調悪いんだ。
貧血かな。
朝から辛かったんだけど。
誰も気がついてくれなかった。
田んぼの真ん中で、何回も倒れそうになっちゃった」
そう言って。
ふわっと笑う美山さんの笑顔が。
何だか悲しい。