「意志じゃないって……
無理矢理ってことか……?」


山本は真剣だ。

無意識に力が入るのか、ぐっぐっと畳に拳を押し付けている。



「そんなことを暴いてどうする?」


興奮する山本とは真逆に、瑠樹亜はどんどん冷めていくみたいだった。

瑠樹亜のゾッとするくらいに冷静な目が、静かに山本を捕らえてる。



「どうするって……」


「お前に何かできるのか?」


「……は?」


「お前に、章江が救えるのかってことだよ」


「……」



山本は唇を噛んで俯いてしまった。

その、仕草は。
胸が痛いほど生々しい。


『お前に救えるのか』

そんなこと。

そんなこと、できないかもしれないって。

本人が一番。
分かってるのに。



『お前は僕を救えるのか』


瑠樹亜の言葉が、まるであたしに向けられてるみたいで。

痛みに……背筋が凍る。




「……わかんねえじゃねえか。
そんなこと……」


絞り出すような山本の声。


「悪いかよ……俺なんかが、美山を守りたいって……思ったりしたら」


……ああ。

あたしは。

山本のその気持ちがよく分かる。

分かるから。

だから。

これ以上見ていられない。


「山本……もうやめな」


「うるせーよ、二谷」


「もう、やめなよ。
瑠樹亜を責めたって……しょうがない……」


涙が出そうだった。

山本の痛みが分かりすぎて。
痛くて、辛い。