「空が高いね」


「……」


「青くて、綺麗」


「……」



あたし、一人で喋ってる。

瑠樹亜は返事もせずに、黙々とお茶を飲んでいた。


それでもいい。

ここには瑠樹亜の匂いが漂ってきて。
体温を感じることができる。
それだけで。
幸せ。



「僕は空なんか嫌いだ」


「え?」


「山も、緑も、この、おにぎりも」


そう言って、おにぎりにかぶり付く瑠樹亜。


「……って、食べてるじゃん」


「食べるよ。
お腹すいてる」


「何それ」


「嫌い、と、食べる、は違う」


「それ、屁理屈」


「うるせ」


憎まれ口を叩く、瑠樹亜がかわいい。


口が悪くたって。
近寄りがたくたって。

同じ人間だもん。
根本はきっと同じ。


瑠樹亜だって、きっと。
ひとりぼっちは寂しいはずなんだ。



「瑠樹亜の隣、マジ幸せ」


「……変な女」



ああ、ほら。
声のトーンが、少し。

前より優しくなったような気がする。