バスの中も新幹線の中も、あたし達は隣同士だったけれど。
山本は本当にいいヤツだった。
退屈しないように色々話しかけてくれて。
(その大体がバスケの話か、向井の愚痴だったけど)
疲れて居眠りする姿もかわいかった。
瑠樹亜は相変わらず、文庫本を読んでいるみたいで。
パラ、パラ、と。
本を捲る音がずっと聞こえていた。
ああ。
瑠樹亜と話したい。
何でもいい。
うざい、とか、邪魔、とかでも。
変な女、とかでもいい。
「二谷ってさ、彼氏とかいんの?」
「は!?」
新幹線の中。
もうすぐ目的地というところで、山本が突然そんなことを聞いてくるから。
あたしはびっくりして仰け反ってしまった。
山本はニヤニヤしていて、興味津々みたいで。
切れ長の目が、いやらしい。
そういうこと、瑠樹亜の前で気軽に話題にするのやめてほしい。
まあ、瑠樹亜なんかあたしの恋バナに、これっぽっちも興味ないだろうけど。
「いないよ。
山本は?」
彼女はいないって知ってるけど、わざと山本にスライド。
「いねえよ」
「山本、モテるのに」
「モテてねえし」
はははっと、笑う。
イヤミを感じないから、このあっけらかんとした性格は得だなあ、と思う。