『興味だけで人を見るな』
そう言った瑠樹亜の鋭い視線。
思い出して。
呼吸を止める。
……ごめん。
瑠樹亜、ごめん。
全然覚悟なんかできてなかった。
お母さんを失った瑠樹亜が、どんな気持ちだったかなんて。
想像するのもおこがましい。
あたしは何にも知らなかった。
瑠樹亜のことなんて、何にも。
それなのに、好きだなんて、簡単に……
今だって。
今だって何も変わらない。
あたしは、無力で。
瑠樹亜にしてあげられるようなことは何一つない。
そう思ったら、涙が滲んできた。
後から後から熱いものが込み上げてきて。
目に見える世界がどんどん歪んでいく。
「……あたし、何にも知らなかった」
絞るように声を出す。
喉の奥が、痛かった。
「知らなくて……それなのに。
瑠樹亜に、好きだなんて……」
「……ひよ」
『女なんか好きにならないよ』
そう言った瑠樹亜の気持ちなんか……
全然……
「泣かないで、ひよ」
あやふやな現実の中で。
美山さんの声だけが。
現実味を帯びている。