「……お母さんが亡くなってから、瑠樹亜はすっかり変わってしまった。
ほとんど、笑わなくなった。
お父さんのことを避けるようになって。
時には暴力を振るうこともあった。
でも、当たり前だよね。
自分の母親を死なせた原因が……
お父さんの浮気、だったんだから」
「……お父さん……の……」
「そう。
その頃から……ううん、もっと前から。
瑠樹亜のお父さんは凪さんと不倫してた。
瑠樹亜も、それは薄々感付いていたと思う」
………
お父さん。
浮気。
不倫。
凪さん。
瑠樹亜の上で上下していた……
白い太股……
くらくらする。
後ろから、ぐうっと髪をひっぱられて、揺さぶられているみたいに。
呼吸が上手くできない。
………
ぎゅっと目を瞑り、痛いくらいに正直な、大好きな瑠樹亜の顔を思い出す。
あのつっけんどんな物言いも。
自己中な態度も。
本ばっかり読んでいる横顔も。
大好きで、大好き。
いつもいつも見てた。
……いつもいつも見てたのに。
全然知らなかったよ。
瑠樹亜が、そんな辛い過去を背負っていたなんて。