雨はなかなか止まなかった。
雨がやんだら、喫茶店を出るつもりだった。
きっと、美山さんも。
だから二人で時間をもて余していた。
空になったオレンジジュース。
ビスケットも、もうない。
「ひよは、瑠樹亜のどこが好きなの?」
「ぶっ」
美山さんが突然そんなことを聞くから、あたしは思わず吹き出してしまう。
美山さんの顔を見ると、そんなあたしの様子を見て、嬉しそうに笑っていた。
……こんな顔は、今日ほ初めて見た気がする。
いつも世間話をする時は、こんな風にいたずらっ子のような微笑み方をするんだ。
「どこがって……」
「顔?」
「顔、も、もちろん好きだけとさ。
スタイルとか、雰囲気とかも。
でも、やっぱり……」
「やっぱり?」
「正直なところかな。
正直すぎて、なんなのーって、思うこともあるけど」
「あはは、わかるわかる」
「そう?
瑠樹亜は、美山さんには優しい」
「そんなことないよ」
「そんなことある!」
「妬いてる?」
「……ヤキモチとは違う気がする」
「そっか」
「羨ましいけど。
ヤキモチとは違う」
「……うん」
「あたしは美山さんとは違う形で、瑠樹亜の側にいたいから」