「落ち着いたら、ひよには必ず連絡するつもり。

だから、これだけは信じて。
私と瑠樹亜は、運命共同体であって、男と女の関係なんかじゃない。

前にも言ったけど。
私はひよの恋を、応援してる」


そう言って、美山さんは嘘のない目で真っ直ぐにあたしを見た。

その目は真剣そのもので。
あたしは思わず息を飲む。


「……うん、わ、わかった……」


声が少しだけ震えてしまった。


……修学旅行の最終日に、瑠樹亜と美山さんが逃げる。
この世界から。
手と手を取り合って。

あたしがそれに、協力する。
美山さんはあたしの恋を、応援する。

それって何だか。
矛盾しているような気がする。

だけどあたしは頷くしかない。
それが瑠樹亜を救う道だというのなら。


あたしは汗をかいているオレンジジュースのグラスを握りしめた。
手の平がぐちょぐちょに濡れて、嫌な感じがした。
窓の外では雨がコンクリートを叩き出している。

道を歩く人達が顔をしかめて歩いていた。

雨に濡れるのなんて、なんてことないのに、と思う。


この世界は、きっと。
あたしが思っている以上にずっと、理不尽なことだらけなんだ。