「それからのことは、またこれから考える。
私と瑠樹亜、二人でお金をかき集めたって、そんなに沢山にはならない。
行き先は、そんなに遠くにはならないと思う。

……おかしいよね。
贅沢な生活をしてるのに。
私達が自由になるお金なんて、ほんの少ししかない」


贅沢な生活。

真っ赤なベンツ。
大きくてお洒落なお家。
イタリアのオペラ。

テレビにも出るような大病院。
高そうなワンピース。
綺麗な帽子。

だからって、幸せな訳じゃない。
それどころか、毎日が辛くて。
悲しくて、痛いんだ。


『普通だってことが、幸せってことを知らない人は、瑠樹亜のことなんか、わからないですよ』

いつか、保健室で美山さんに言われたことを思い出す。


あの時のあたしは……
確かに瑠樹亜を知らなすぎた。
美山さんのことも、もちろん。


たけど、秘密を知ってしまった今だって。
あたしの瑠樹亜に対する気持ちは全然変わってなんかいない。

それどころか。

できるならあたしが彼を守りたいという、身の程知らずな思いすら抱いている。