「……それで、ね、ひよ」


「ん?」



そう呼び掛けられて、あたしは美山さんに視線を戻した。

美山さんは円らな瞳で。あたしをじっと見上げている。



「私と瑠樹亜は、そんな理不尽な世界を、自分達の手で、終わらせようと思ってる。
その、手助けを、ひよにしてもらいたいと思ってるんだ」


……『世界を終わらせる』
瑠樹亜の言葉を、繰り返した。



「……うん」


「私たちは無力だけど。
もう、こんな世界に支配されていたくない」


……こんな世界。

父親に暴力を振るわれる世界。
望んでいないセックスを強要させられる世界。


「うん」


今度は力強く頷いて見せる。

そんな世界は壊してしまって当然だ。
終わらせてしまうのがいいに決まってる。


こんなに儚げな少女を殴るなんてどうかしてる。
瑠樹亜にしたって。
きっと、脅されたりしているに違いないんだ。


そんな辛い世界なら。
あたし達の手で壊してしまえばいい。



そのためにあたしができることなら。

何だってしよう。