「……やっぱりね」
美山さんがそう言うのと同時に、マスターがオレンジジュースと、葉っぱの形をした木のお皿に乗ったビスケットを3枚、持ってきてくれた。
あたしがお礼を言うと、
「私のおごり」
と、美山さんが微笑む。
喉が乾いていたので一口飲むと、酸っぱさが口の中いっぱいに広がった。
「……私の。
父の話は、瑠樹亜から聞いた?」
美山さんの声が弱々しい。
……父。
お父さんとのこと。
殴られたこと。
殺されかけたこと。
本当は。
言葉にもしたくないし。
思い出したくもないんじゃないのかな。
そう、思ってしまう。
「……うん」
「……うふふ。びっくりしたよね」
びっくり……
うん。
びっくりは、した。
したけど。
それ以前に。
理解ができなかった。