けど、否定はされなかった。
……はず。
「あ、そう」は。
瑠樹亜の精一杯の優しさだ。
だから?って責められることも。
それで?ってバカにされることもなかった。
ウザい、と言われることも。
ムリ、と言われることも。
ああ、けど、まさか。
このあたしが瑠樹亜に告白してしまうなんて。
「うわあああ……」
溜め息とともに、変な声が出てしまう。
瑠樹亜はどう思ったんだろう。
迷惑だと思っただろうか。
それとも、嬉しい、とか?
ないないない。
期待なんかしちゃいけない。
だって、瑠樹亜には、美山さんが……
……美山さん。
お父さんに殴られたって言ってた。
殺されかけたって。
あたしは自分のお父さんを思い浮かべてみる。
眼鏡をかけた、優しいお父さん。
あたしはお父さんに、手をあげられたことなんてない。
怒鳴られたことすら。
いつも仕事で忙しいけど。
家族を大事にしてくれる。
優しい眼差しで見守っている感じ。
ここぞという時に、どしん、と重い言葉をくれる。
けれど、美山さんは、お父さんに……
考えれば考えるほど胸がドキドキした。
あたしには想像もできない世界が、瑠樹亜と美山さんの周りには広がっている。
それが現実とは思えなかった。
けれど、その世界は……
あたしの知らないところに、確かにあるんだ。