「……ごめん、わかってる。
けど……」


「けど、なんだよ」



感情がなかった瑠樹亜の声に。
ほんの少しの怒りが見える。

文庫本を、パタンと机の上に投げた。



「もう少し、待って。
分かるようになりたいから。
瑠樹亜のこと。
分かるように努力するから」


「なんだよそれ。
同情かよ」


瑠樹亜の声が強くなる。


……同情?
ごめんね、瑠樹亜。

子供のあたしには、この気持ちが同情なのかどうかも分からないよ。


だけど痛いんだ。

あたしの心が、瑠樹亜と美山さんの痛みに呼応してる。
それだけは分かる。

それが同情というのなら、そうかもしれない。
そうかもしれないけど。

あたしがあなたを知りたいという欲求は止まらないんだ。



「あたし、好きなんだ、瑠樹亜が」


「は?」


「だから知りたいんだ。
知りたいと思ったんだ。

やめて、なんて言ってごめん。
あたし、何でも受け止める」


瑠樹亜があたしを見ている。
その瞳が、ほんの少しだけ。
揺らいだような気がした。



「瑠樹亜のこと、好きだから」



……好きだから。
って。

ああ、何言ってんだろう、あたし。

予想外の、告白だ。