手前に並ぶ雑誌コーナーで目に留まったのは、電車が大きく映し出されている増刊号だった。


手に取りペラペラッと捲ってみると、廃車された懐かしい鉄道がカラー写真と挿絵などで丁寧に解説されていた。


――昔鉄道マニアだった頃。朝起きるとワクワクして、高機能な一眼レフを持ち、いろんな電車を楽しく撮ってたっけ……。


懐かしい趣味を思い出し、次へと次へとページを捲った。


――この頃は夢中だった。ストレスなんて感じないほどに……親父もお袋もそんな俺の趣味に付き合って、いろんな場所へ連れていってくれたっけ……


そうだ、20代になってもそんな楽しみを忘れずに続けていたけれど、今の妻、美紀と付き合い始めてから、禁止されてしまったんだっけ……気持ちが悪いって。


結婚してからはそんな出来事さえも全て忘れ去ってしまっていた。


当初の新婚生活は、なにもかも新鮮で刺激的で、それでいて官能的だったのに、あの気持ちはどこへ行ってしまったのだろう?