彼のアパートは本当に近くて、2、3分で着いてしまう距離だ。
別に走ってしまえばそう濡れるにしても対して酷くはなさそうだ。

少し冷静になって彼を見上げる。
結構本降りになった雨に傘差してたとしても少しは濡れて、彼の栗色に染まった長い髪が肌に張り付く。
お化粧なんてしてないはずなのに。

本当に、この容姿には圧倒されてしまう。
「どうしたの?俺に見とれてた?それとも担ぐより抱き上げてお姫さまだっこの方が良かった?」
「あ、いえ・・!!」

焦って思わず声が上擦ってしまう。

「それとも両方かな?」
そう笑って言うと、彼は自分の部屋のドアを開けると、私を中へと促した。

「ちょっと待ってて、タオル取ってくる。」
彼はさっさと靴脱いであがって。
私はぼんやりその後ろ姿を見送った。

考えてみたら、信じられない。
あんなに大好きで、思いこがれた憧れの人のうちに上がるなんて。

案外、近くに住んでるってこと。
見た目綺麗だからなんとなく偏見ですっごいマンションに住んでるって想像してたのと違うなぁとか思いつつも。

「お邪魔します。」

私は靴を脱いで玄関をあがった。