「で、どうしようか?」
「え?」
「決まってるでしょ、雨が降ってる。
俺、傘持ってない。」
「あ、そうですよね・・」
でも、此処はコンビニ。
傘なんていっぱい売ってるけど。

「貸して。」
「へ?」
彼は突然、私の折り畳み傘をとった。
「ちょっと・・!!」

あまりの突然の出来事に面食らう。
「俺んち、すぐそこ。」
「・・はい。」

今思えば、だから?と突っ込みたいのを堪えつつ。

「この雨、まだもっと強くなるでしょ。
きみが、この傘を俺に貸しなさい。
お礼にうちで雨宿りさせてあげるから。」

そう言うと、彼は私の手をとり、すたすたと歩きだす。
「ちょっと待ってっ!」

こんな強引な展開で、どうすればいいのっ!

彼は20cmも差のある歩幅を無視してどんどん歩いてしまう。
いつの間にか私の鞄まで持ってて、手を引いて。

ただ、不覚にもやはり凄くときめいている自分がいた。
雨のせいで所々水溜まりが出来てる。
彼はひょいと、私を担ぎあげた。

「きゃあっ!」
「こうしたら靴濡れないでしょ♪」
彼は楽しそうに、歌うように言うと、そのまま自分のアパートまで辿りついた。