「そんな〜」

へなへなと脱力する自分がいた。

「あほやな〜そりゃ、俺は確かに年齢不詳だけど、実際よりえらい若くて、関西弁がそんな嫌なん?
まぁ、メンバーにもイメージあるからプライベートでも極力標準語で話せや言われてんねんけど。」

うぅ、世の中知らないままで・・憧れなままの方が幸せなことってあるのね〜

「いえ、すみません・・私が勝手に幻想してただけですから。
もう、すぐ帰ります。」

しょぼん、とうなだれてた私を見て、秀人さんは飲みかけのビールの缶を置いた。

「まぁ、そう悲観すんな。ほんまは君のことめちゃ、気に入ったから此処に連れてきたんやし。」

その言葉には、先程迄の彼とは打って変わった響きがあった。

「ほんまは君のこと、ライブ見て知ってたんや。
女にしとくにはもったいない、巧い子やな〜って。」
「私を、知ってた?」

「そ。ついでに、めちゃめちゃ俺好みでカワエ〜って。」

気付くと、秀人さんは私の手首をつかみ、その怖いくらい綺麗な顔を向けている。っていうか、今、別の意味で怖いっていうか、危険っていうか〜!

・・嘘。

秀人さんは、その整った顔立ちのパーツのひとつである唇を、私の唇に重ねた。