* * *
「春、お前は葵に溺れてるだけだ」
正臣のその一言は、私の涙腺を刺激させる為だけにあるような言葉だった。
私は葵のことが好きで大切で、一番の親友で一番大切な人で。ただそれだけ、それだけなのに。溺れてる、溺れてるってなんだろう。葵に溺れてる?
「わけ、わかんない」
本当にわかんないんだけど。
正臣はなにが言いたいわけ?
私の世界は葵が中心に回っている。でも正臣も涼太も、私の世界には必要で。
「なんで、こうなるの」
なに、この不安と焦りは。
私、もしかして自覚でもあったの?
葵に溺れてる、自覚。
あー、もうなにも考えたくない。
なにもわからない。
正臣が言いたかったことも。
でも一番わからないのは自分のこと。