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「春、お前は葵に溺れてるだけだ」

正臣のその一言は、私の涙腺を刺激させる為だけにあるような言葉だった。

私は葵のことが好きで大切で、一番の親友で一番大切な人で。ただそれだけ、それだけなのに。溺れてる、溺れてるってなんだろう。葵に溺れてる?

「わけ、わかんない」

本当にわかんないんだけど。
正臣はなにが言いたいわけ?

私の世界は葵が中心に回っている。でも正臣も涼太も、私の世界には必要で。

「なんで、こうなるの」

なに、この不安と焦りは。
私、もしかして自覚でもあったの?

葵に溺れてる、自覚。

あー、もうなにも考えたくない。
なにもわからない。
正臣が言いたかったことも。

でも一番わからないのは自分のこと。