稜はゆっくり立ち上がると、私の前にしゃがんだ。

涙でグチャグチャの顔を覗きこみながら、ニコっと微笑んで、私の頭をポンポンする。



「大丈夫か?」

「......大丈夫、じゃない。」



稜はいつもみたいに、鼻で、ふふって笑って、指で涙を拭ってくれた。



「普段しっかりしてるくせに、ダダこね始めると甘ったれになる、小さい頃の心優みたい。」

「......だって。」



私は、稜ではなく、航佑を選ぶつもりでいた。

私のヒネくれた複雑な胸の内を知りながら、強い愛で守り続けてくれた航佑を、今度は私がそばで支えてあげたいと思ったから。



陵の出した答えは、まるで私がそう告げようとしているのをわかっていたようで、私が言葉につまって言えなくなる前に、先周りして代わりに言ってくれているようで........

自分が一番辛いはずなのに、優し過ぎる。