一方、久しいと声を掛けられた清明。


はて?久しいとはまだ面様な。
一昨日、殿中で顔を合わせたばかりの筈だ。
しかし、清明はそんなことは一切表に出さず、にっこり微笑んで、頭を下げた。


「右大臣ともあろうお方に、わざわざご足労頂いては、この清明、明日以降殿中でどんな謗りを受けるか分かったものではありませんな」


アポなしで来訪した道長への皮肉にしか聞こえないぞ、それ。


透理は権力者にそんな言い方して大丈夫なのかなぁ?と、一応心配する。


だって、清明が無職にでもなったら、透理の生活だって危うい。


しかし、道長は清明に皮肉られたことに気付いているのかいないのか、かっかっかっ!と笑った。


「殿中に清明を謗ろうという肝の座った猛者などおるものか。皆、そなたからの報復を恐れて口を噤んでおるさ。そなたはその程度で報復するような男ではないのだがな」


ふむ。
頭の悪そうな外観とは別に、意外とちゃんと見てるらしい。


まあ、そうでもなきゃ藤原一門の栄華なんて築けないか。


第一印象を、爪の先程度には改めた透理であった。


でも一つだけ訂正。


清明って、たぶん…というか結構わがままで子供っぽい。