玉若の指差した2箇所に鏡を置いて観察する、という事で互いに納得した透理と清明は、清明の部屋で道長を迎えた。


しばらくすると、萌黄色の狩衣姿小男がパタパタと歩いてきた。おそらく本人は胸を張っているつもりなのだろうが、ふんぞり返っているようにしか見えない。


というか、歴史に名を残す偉人のはずなのに、実物にそんな威厳的なものを何ひとつ感じないんですけどー?


教科書で見た絵と似てるのって、服装とずんぐりむっくりな身体だけじゃん。


なーんだ。がっかりー。
期待ハズレー。


道長からすれば、後世で自分がそこまで有名だなんて知ってるはずもないし、勝手に期待して落胆するな、というところだが、幸か不幸か、道長は透理のそんな感想は知らない。


世の中、知らない方が良いこともある、という見本である。


透理の存在に気付かないまま、道長は清明の正面にどかりと胡座を搔いた。


「久しいな、清明よ」


胡座を掻いて、なお胸を張っている道長が、どうにも滑稽過ぎて、透理は吹き出しそうになった。


見張り役の玉若に至っては、道長と必死に笑いをこらえる透理を見比べ、ケラケラと爆笑している。


もちろん、玉若の爆笑は道長には聞こえていない。


妖怪ってずるい。