でも、桜井さんには
大切な恋人がいた。

みたことないけれど
高校時代から付き合
っていたのだから、
そうとうなかがいい
んだと思っていた。



「俺、もう、あいつとはあかんわ…。」


あたしは桜井さんと少しでも近付けるようにあの本屋でバイトすることにした。
だから、同じシフトにもなることがよくあった。


「何かあったんですか?」

「…男とあってるとこ見てもうてん。」

「……」

「まだ、会ってるだけなら全然ええねん。…でも、さすがにキスとかしてたら疑うやん?それがあいつ……白きり通すつもりやねん。ほんま、もうあかん…」


桜井さんは深いため息をついた。
今日も雨で本屋も客はすっからかん。


「…桜井さん」

「ん?」

「あたしが慰めてあげよっか?」
「…ぶ」

「…まぢなんだけど!」


桜井さんはあたしを正面からだきしめた。


「ありがと。お言葉に甘えて、たのもうかな…」

「うん…」


それから、あたしはセカンド。





最初はそれでよかった。



よかったのに…