金と銀で彩られた世界なんて興味もない。
金なんていらない、保証された未来なんていらない。
何にもいらない。
富だって、名声だってくれてやる。
この地位だって、玉座だって、冠だって。
だから、一つだけ。
一つだけくれよ。
俺が自分から欲しがった、初めてのものなんだ。
─────エレン…─────
「なんですかあなたたち!!」
「いいから、来い。王様のご命令だ」
ぐいぐいと手を引っ張られるのに反抗するも抵抗虚しく強制連行。
私は、エレン。
ただの花屋の町娘。
そんな私が、なぜ王様に呼び出しなどくらっているのですか!?
「王様、連れてまいりました。」
ドサ、と荒々しくも丁寧に私を床へ下ろし、兵の2人は1歩後ろへと下がる。
「…下がれ」
「はっ。」
王様の一言で更に3歩後ろへと下がった2人の兵は、そのまま豪華な扉から出て行ってしまった。
ここはお城。お城の中では嫌でも立場がしたな私はその場に正座をし、頭を床につける。
「王様、今回はどのようなご用件で──…」
「頭を上げろ」
私が言いおらないうちに横暴に冷徹に言葉をかけた王様を見上げる。
青色の瞳に金の髪、黒いマントを翻し玉座に君臨するその姿はまるで
"龍"
獲物を見つけたような野生の瞳でジッと見つめられる。
世界に2人だけしかいないような、不思議な感覚に陥るもハッとして我に返り顔を背けた。
「立って、この段を上ってこちらに来い。命令だ」
「ッそんな、私はそちら側にはいけませんッ…!!」
私達の国で、玉座の前にある一段の段を上ることはタブー。
婚約者でもない限りは、絶対に踏み込んではいけない。
どんなことがあっても、それだけは律儀に守られてきた掟だ。
今更そんな、自爆行為なんてするわけ──…
「聞こえなかったか?命令だ、と言っただろう?」
唸るように言われ、思わずひるむ。
一歩、また一歩と恐る恐る近づく。
王様ってこんな顔するんだ…
今でも、野性的な瞳は私を捉えて逃さない。
まるで、わたしを、捕まえるような─…
「そう、いい子だ、ッ─…」
グイ、と手を引っ張られ思わずつまずいてしまった。
転ぶ!!!!!
そう思い硬く目をつぶり構えたけど、衝撃は来ない。
ゆっくりと目を開くと、玉座から身を乗り出し私を右腕で構えている王様が見えた。
「ッ…王様!?私のような、下賤な者に触れないでください!お手が汚れてしまいます…!それにッ「黙れ!!!」
ビクッと大げさに体をふるわせた私に王様は口を開く。
「自分を卑下するな!!お前は、下賤な者なんかじゃない!!…頼むから、自分を蔑むような言葉を使うな…ッ!」
牙をむき出しにし、肩を震わせながら叫ぶ王様はなぜか悲しげで。