ここは…結構人通りが激しい…。
それなのにもかかわらず翼は、私を強く抱きしめる。
人前でベタベタするのが苦手なくせに…
その翼の行動が…やり直したいと心底思っていることを物語っている。
そんな翼に…
私の胸がズキンと痛んだ…。
しかも、久しぶりに翼の匂いに包まれて…何故かホッとしている私…。
だって翼の胸は私の大好きな場所だった。
暖かい胸も…強く抱きしめてくれる腕も…
大好きだった…。
…でも…もう…
私は…翼から離れ…
『翼…逃げててごめん…。話があるの。』
俯く私に、翼も、
『俺もだ…。』
と、真剣な顔で言った。
それから翼と私は、翼の車に乗り込んだ。
久しぶりに乗った気がする…。
車内は私が選んだ芳香剤の香り…。
大好きな柑橘系の香り…。
ここも…大好きな場所だった…。
翼が初めて買った車…。
助手席は、私の特等席だった…。