バーには2ヶ月近く行っていない。



主役に選ばれるために…


主役になれたら実行しようと思っていた計画のために…


無我夢中で劇団にのめり込んだ。





そして…



また主役になった俺は…



舞台を一週間後に控えた夜…

バーに向かった。




今日は金曜日…。


翼さんが決まってバーに現れる曜日だ。



金曜日の夜なんて…休み前で、恋人達は一緒にいる時間なはずなのに…


翼さんは必ず一人で来ている。


理夜をほったらかしにして…

理夜は寂しい思いをしてるんじゃないのか…?



なんて、いつも心配だった。





バーのドアを開けると…

今日は金曜日だけあって、人が多い。


カウンターのいつもの席にやっぱり翼さんは座っていた。



俺に気付いた翼さんは、軽く手を上げた。


俺は笑顔で近づき、


『お久しぶりです。』


そう言って、隣に座り、マスターにも軽く会釈したあと、いつものカクテルを注文した。