『いつものでいいのかな?』
マスターの声に、翼さんは、
『あっ…はい。お願いします。』
マスターに視線を向けたが、また俺に振り向き、
『ここ、たまに来るんです。』
そう言った。
きっと俺が、不思議そうに見ていたからだ。
そんな俺を察して、言ったんだ。
『そうなんですか…』
俺は心の中を見られた気がして…焦ったが、決して顔には出さなかった。
たまには役者も役にたつもんだ…。
『あの…あなたもここによくくるんですか?』
『あっ…はい、まぁ…。ここは元バイト先なもんで…よく…というかほぼ毎日…かな…。』
『じゃあ…顔見知りになったということで…』
そう言った翼さんは、マスターが差し出したグラスを、マスターに軽く会釈したあと手に取り、俺に傾けた。
俺は、
『あぁ…はい。』
グラスを突き合わせた。
…俺は何してるんだ…
好きなやつの恋人と…
仲良くなってどうするんだ…