ポストの差し込み口にうまくフィットしていて、ちょっと苦労しながらそれを取り出す

差出人欄に「黒崎海斗」という見慣れた字で書かれた名前をみて

慌てて鍵を開けて部屋に入る

しんと静まり返った部屋の電気をつけ、

カバンをそこらへんに放り出してソファの上に座り、しげしげと箱を眺める

どっからどう見てもそれは海斗の文字

堅苦しいほど整っているわけではないけれど、読みやすいきれいな文字

住所はもちろんドイツからだ

配達日指定に丸が付いているので、どうやら今日届くように、

しかもしるふが帰ってきたらポストに入っているように時間まで指定してくれたらしい

そういうところが海斗らしい

小さく微笑みながら箱を丁寧にあける

外見はただの段ボールのその箱の中身は、

「……オルゴール?」

周りにたくさんのクッション材を敷き詰めて、

箱の中温に鎮座したそれは、クリスタルのグランドピアノの形をしていた

裏返すと回すところがあって、カチカチと音を立ててつまみを回してテーブルの上にそっと置く

タン、タン、タン、タンッタ、タンッタッタン

ゆっくりと小さな音を奏で始めたオルゴール

それはしるふの大好きな曲だ

切なくも大切なヒトを想う曲