【実話】ありえない男への復讐

「痛っ。このクソ女、何してくれるん!?」


「お前、出て行きたくないんやったらその口塞げ。」


わたしの顔は相当キレとったやろう。

これ以上言うとほんまに出ていかされる思ったんか、拓也は黙った。



「暴力女なんて絶対ゴメンやわ。」


そう言うと自分の携帯をいじり始めた。

こいつは出会い系をしまくっとる。

某無料サイト。

相当メールしまくっとる。

それを普通に言うから神経を疑う。



「拓也、今何人メル友おるん??」


「未知数。」


おもんなっ…。

相手にするのも疲れるから話すのをやめてまたテレビを見とった。



わたしが何でこの家におるかっていうと弟を待ってるから。

いつもは彼氏の家だけど今日は弟の誕生日やった。

プレゼントやろう思て待っとった。



そんなとき弟が入ってきた。

今日は誕生会を彼女とするらしいから早く出ていくらしい。

だから早めに来てたってわけ。



「裕太、おめでとう。はい、コレ。」


わたしは裕太の好きなブランド、トミーフィルフィガーの時計をあげた。

あけた裕太はほんまに嬉しそうな顔をしとった。

それはわたしも嬉しくなる。



「裕太くん、俺もあるで。」


そう言って拓也も裕太に何か渡した。

こいつたまには気きくやん。

そう思ってたら大間違い。
それはオ○ニー○ールとエッチな本。

しかも本は見るからに新しいのじゃない。

こいつの見終わった奴やん。

包装もしてへんし、どう考えても私物を分けてやっただけ。


姉の前でこんなんもらった裕太、顔が引きつっとった。



「俺、彼女で満足なんで。」


そう言って付き返す裕太。


「拓也くん、使ってええで。」


そう言うと拓也はすごい笑顔で受け取ってまたそそくさとなおしよった。

こいつ…最低や。

人間性疑うで…。




こんなんは軽い方。


こいつは平気で人の家の風呂出しっぱなしで出かけてガス代すっごい請求が来たことがある。

キレても俺やないの一点張り。

あんときの叔母のキレようはハンパじゃなかったけどな。



わたしの下着を平気で盗む。

部屋に置きっぱなしのがまだいっぱいある。

その下着を手で持ってるところを洋介くんが目撃しとって大爆笑しとった。

笑いごとじゃない!!



洋介くん以外への暴言が激しい。

ワキガやないのに平気で大悟くんとかに


「大悟くん、ワキガひどいなー。」

って言う。


みんなわかっとるけどワキガの犯人は拓也。

自分なのに人になすりつける。


一度大悟くんがブチキレて拓也をボコボコにしたっけ。


でも懲りずに拓也は

「今日、ワキガ来るんやろか…。」

と言ってたりする、今でも。
「なぁ、拓也どうにかならんの?ほんまムカつくんやけど…。」


わたしの不満をアパートに帰って洋介くんにブチまけた。

横で翔太が笑っとった。

拓也のアホ話は翔太のお気に入り。



「そなん言うたって俺にはあいつがおると得ばっかやねん。飯買ってきたり、作ったり、仕事変わりにしてくれとったり…。」


あいつほんま洋介くんに媚び媚びやんけ…。


大体、洋介くんがこうやってかばうからわたしたちに対して調子に乗る。

何言うたって許されると間違う。



「ちょっと何か言うてよー!!未だに大悟くんのことやってワキガ言うとるで??」


そう言うと洋介くんの笑い声。

こいつは何もする気はないということがわかった…。




数日後、久々に千尋ちゃんと会った。

そのときに拓也の話をした。


「この前洋介と拓也が店来て拓也に『千尋さん、明らかに足太いっすよね。声でかいし俺、頭キーンてなりそうですよ。』ってまじまじといわれたんやで!?焼酎頭からフッかけようか思たわ。」


「あいつほんまありえんわ…。」


もうここまで来たら拓也の悪口大会。


「『千尋さん目当てに来る客とかおるんですか~?』って言われたし。お前接客1つも出来んくせよー言うわ!ってキレるとこやったわ。あいつに1度だけホストやらせてみたい…」


「間違いなくキレられるな…。先輩ホストから殺されるかもしれんな。」


わたしの言葉に千尋ちゃんは頷いた。


「あいつ、出会い系まだしよるん??」


「しよるでしょ~。だってあいつ出会い系での女くらいしかおらんでしょ。あいつの素性知って連絡取り合うとかよっぽどドMかブサイクか…。」


そんなとき千尋ちゃんがカチカチと携帯をいじった。


「このサイトやっけ??」


千尋ちゃんの携帯には某有名出会い系サイトがあった。

まさしく拓也が使っとるサイト。
「そこやけど探すん!?ここ、ほんま人の数多いし無理やって。」


「ええから。」


そう言って千尋ちゃんはカチカチカチカチと携帯をいじりはじめた。

20分程いじったやろうか??

テーブルに携帯を置いた。

その瞬間光り出す携帯。

メールがほんまにたくさん届きよる証拠やった。


「千尋ちゃん、投稿したやろ??」


「うん、拓也探しにな。【軽が好きやから軽に乗っとる優しい人メールください。かっこええ人がええな。名前入れてな。】って入れた♪」


そう言いながら届いたメールを読んでた。

読みながら違う、違う、違う、違うって言う千尋ちゃん。

そううまく来るわけがないのに。



その日、そううまくメールは来なく、千尋ちゃんの出勤が近づいたから解散した。


「わたし、またチャレンジしとくわ!!」


って千尋ちゃんの言葉を聞いて。

このサイト、確か相当人が多いって聞くから無理やろ。



わたしはそう思っていた。



なのに届いたメール。


【来た!!この下のが多分拓也やと思うで。<moveに乗っとるたくやです。優しいし顔も悪くないで。メールしよ。>】


この文が入っとった。


ほんまにアホや。

出会い系にどっぷりつかっとる。

きっと同じようなメール送っとるんやろうな。



【ありえん…。でもこんなことしてどうするん??】


このメールの返事はなかった。


翔太とまた拓也の笑い話だった。

ほんまあいつバカやろ。って。



翌日、また千尋ちゃんに呼び出された。

仕事が6時半に終わるからそれから近くのファーストフード店に千尋ちゃんが来てくれとった。


「里美、ほんまおもろいことせーへん??」


ニヤニヤしとる千尋ちゃん。


「おもろいこと?ええけど何?」


だいたい話は分かってた。

拓也のあのメールをしろって言うんやろう。

わたしは無理や。

アドレス、知られとる。



「このケータイで拓也とメールしとって。」


それはウィル○ムの携帯だった。


「はぁ?わたしが?つーかこの携帯誰の?」


「わたしの。どうせ買うつもりやったから買ってきたんよ。」


…わざわざ手の込んだことを…。


「でも何でわたしが…、千尋ちゃんすればええやん!!」


「いやや!!あいつとメールするって想像するだけで鳥肌もんやから。」


そんなんわたしもやって…。

でも長い付き合い。

千尋ちゃんが折れるとは思えない。

かといって断ることも絶対できひんやろう。


「…ちょっと面白そうやな。」


それに興味もあった。

わたしらは拓也とメールをすることに決めた。
「どうやってしよう?昨日メール来とったし、きっかけはええよな。あとは名前とか歳とか…。」


わたしがそう聞くと


「そんなん里美の好きにやればええわ。」


そう言ってタバコを吸い始めた。


「まじ人任せやな…。じゃメールしてみる。ってもう拓也のアドレス登録済みやん!!」


「拓也のしかまだ入れてへん。」


ニヤっとする千尋ちゃん。

拓也専用携帯とかほんまありえん。

あいつにそこまでするなんて…。


「あいつをヤラクの外に落としいれたる。」


「…そうやな。」


きっと奈落の底と言いたいんだと思う。

実話を読んでもらえばわかるけどわたしらはあれた生活やった。

勉強なんてほとんどしてへん。

頭、最高に悪い。

こんな言い間違いなんて毎度のこと。



前なんて翔太が風邪ひいたとき


「悪寒が走っとる…。」

と言ったとき


「どこを?元気やな。」


「…あんな、悪いの悪と寒いの字で悪寒て言うねん。お母さんのおかんとは違うで?」


教えてもらったことがある。

恥ずかしいし、翔太はほんま大笑いしとった。

こんなんいつものこと。

わたしはメールを始めた。


【メールありがとう。美里です。21歳で美容師のアシスタントやってます。】


メールを作成して千尋ちゃんに見せた。


「これでええ??」


「美里かて!!逆なだけやん!!あかん、博美にせぇ!!」


「ひろみ…ちひろ…似てへん?」


「うちのおかんの名前や!!」


じゃあ最初から決めてくれたらええのに。

ほんま言うこととやることが合わん。


名前を博美に変えて拓也に送った。



2分後にメールが来た。

早すぎる。

どんだけヒマやねん…。


「拓也しかアドレス知らんからこれ拓也やろ!!」


あけるとほんまに拓也からやった。

そしてその本文にわたしたちは口をポカーンとあけてしまう羽目になる。



「博美、何カップ?」


「まじ死ねやね!!ほんまありえん!!」


「里美、Gカップにせぇ!!」


「は!?でかすぎやん!!」


またもや好きにやればええって言うのに千尋ちゃんが決める。

勝手に千尋ちゃんがすればええのに。


【Gカップやで。】


キモすぎて一言しかいれへんかった。

そしてまた次のメールでもうキモくて返事したくなくなる。
【俺、デカいで。】


千尋ちゃんの新しい携帯やなかったらきっと投げてたやろう。


「何て来た!?」

ニヤけて聞く千尋ちゃんに携帯を渡すと千尋ちゃんは携帯を投げよった。


「キモい!!」


とか叫んで。

客のほとんどがこっちを向き、驚いとった。

新しい携帯はカシャーンと音をたてて床を滑る。


「壊れるやん!!」


そう言って取りに行くと傷はついたものの無事やった。


「里美、今日家帰って拓也の様子見てきてくれへん??」


「いやや!!会ったらまじ殴る気しかせんし。」


口が達者なあいつにはもう暴力しか頭にない。


「殴ればええやろ。な、行ってきて。わたしもう行かんとヤバいしあとは適当に返事しとってな。」


そう言って千尋ちゃんは立ち上がった。

千尋ちゃんは片付けということをしない。

いつも千尋ちゃんが食べたものはわたしが片付け。

トレーを持ってゴミをゴミ箱に入れた。


その昔たまり場のファーストフード店でトレーまでゴミ箱に毎回毎回入れよったら店員が注意してきて逆ギレして出入り禁止になったことがある。

千尋ちゃんが。


それ以来、めんどくさいとか言うて片付けをせん。