———————ちりんっ…
この鈴の音はわたしのトレンドマークみたいなもの。
だから、絶対に鈴をなくしてはいけないの。
わたしの名前はアオ。
目の瞳が青いからなんだって。
この名前は気に入ってる。
だってわたしの好きな彼がつけてくれた名前だから。
彼に早く会いたいな。
そう思って歩くスピードが徐々に上がっていった。
…そういえば、彼の家もわからないわたし。
どうしよう…あ、そうだ!
あの場所いってみようかな。
思い浮かんだのは、思い出の場所。
彼と出会った場所。
彼に助けられたあの日の場所に…
行く先はきれいな川のほとりの近く。
あ。
いた!!
陽斗だ!!
忘れるはずもない。
見間違えるはずもない。
わたしを救ってくれた彼。
あたしの初恋の人、陽斗。
話しかけたい。
でもどうやって?
・・・・・あ、
いま私人間の女の子だっけ?
じゃあ、陽斗もわたしの声に気付いてくれる?
わたしの声、陽斗に届く?
そんな嬉しい気持ちがあふれたわたしは
思わず陽斗に飛びかかる。
「はーるーとっ」
がばっ
「うおっ」
わたしは勢いよく陽斗に抱き着いた。
きゃーー
陽斗だあ!
本物の陽斗だあーー!
わたしは今初めて人間という彼に抱きついている。
それはほんとにわたしにとって奇跡に近い感覚だった。
「…いっ!おいっ放せよ!おいっ」
へ?
ベリッはがされる。
わたしの肩をぐいっと拒むのは紛れもなく陽斗で…
わたしは困惑した。
え、なんで?
陽斗はわたしのこと嫌い?
なんて思うと涙が出てきて。
目には大量の水が溢れる。
「ちょ、おいっお前…って何泣いてんだよ」
さっきまで怒ってた陽斗が今は困ってた。
人間って不思議。
表情がコロコロと変わる。
そして、わたしのこと分からないって顔してる。
お前誰?みたいな顔。
そりゃそうか。
だって前は会ったのはこの姿なく、本来のわたしの姿だったもんね。
わたしの本来の姿は猫。
真っ黒な毛に包まれた猫。
なんで人間の格好してるかって?
神様にお願いしたの。
陽斗のような人間になりたい。
陽斗に会いたいって。
陽斗に恩返しがしたいって。
そしたらね、いつの間にかわたしは人間になってたの。
ほんと奇跡みたいで、夢なんじゃないかって何回も思ったくらい。
でも、夢じゃなくて…
あと一週間しかない命を神様は願いを受け入れて
人間にしてくれたんだってわたしは思ってる。
陽斗はわたしを救ってくれたの。
それが嬉しくって。
こんな真っ黒の何もできないこの猫のわたしを
あの日救ってくれた陽斗に何かしたいって。
だから、人間になった今日この日。
ウキウキ気分で陽斗に会いに行ったのに
何この嫌われよう…。
前は抱き着いたら頭撫でてくれたのに…。
※猫には抱き着いた感じだけれど
↑陽斗には猫が自分にすり寄ってきたくらいしか思っていない。
「お前さ、誰だよ?」
ほえ?