図書室の扉を開くといつもと変わらない陽輝がいる。

「卒業おめでとうございます」
「ありがとうございます」

最後のこの日まで、いつもと変わらない話をするだけ。

「そろそろ帰りますか?優那ちゃん」
「そうですね」

もうすぐお昼。ずっとここに残っているわけにはいかない。
鞄を持って陽輝への恋文を取り出す。
どう渡そうか悩んでいると、陽輝から一枚の紙が渡される。

「何ですか?これ」
「僕の連絡先です。陽南が会いたがってますし、これからも時々会いませんか?」
「え?」
「これから夢に向かっていく君達にとって迷惑なら……」
「いいですよ。陽菜達は竹本さんの連絡先知ってるんですか?」
「はい。この前、街で会った時に交換しました」

自分だけが特別な訳じゃない。そんなことわかっていたこと。

帰路につく優那。陽輝への恋文は……作業している本の上にそっと置かれていた。