「頭もついでに洗ってやるよ、嬉しいだろう? こう見えて、お前に感謝しているところもあるんだよ。

俺はいつも帰りが遅いし、お前が両親の面倒を見てくれる。本当に助かっている……ありがとう。こんなところじゃないと言えないからな」


俺の髪の毛をくしゃくしゃにし、シャンプーまみれにした秋雄が言った。お湯を何度か浴びせられ、まるで修行僧のように無の感情になった。


――秋雄が、俺に感謝をしていただと?


俺はお前と比べられて散々な思いをしてきたのに、優越感を味わい続けたお前が、感謝をしているだと?


目から鱗だった。


「あ、ありがとう。今度は俺が頭を洗うよ」


「おいおい、無理やり背中を向けさせるなよ。尻が痛いだろう! ……なんだよ、泣いてるのか?」


「下手糞なシャンプーの嵐が、目に入っただけだ!」