その頃から兄貴は文句ばかりを言っていた。懐かしいが、良い思い出とはいえない。


「信介は小学生で既におでぶだったから、家の風呂に二人で入ると、お湯が殆どなくなったっけ。その度に俺がぶち切れてさぁーなぁ?」


「その代わりに、何度も背中を流しただろう? 本当に嫌な思い出だ」


「そうか? また洗いっこしようぜ、ほら早く行くぞ」


――なにが洗いっこだよ、いい気なもんだ。まったく。


シャンプーやリンス、タオルを持って鼻歌を歌う秋雄の背中を追った。


「ああ、そうだ。一度絵恋と出る時間を決めなきゃ……信介、一時間でいいか?」


「新婚夫婦に任せるよ」